組織論の授業で、面白いクイズを行った。
あなたの宇宙船が月面でクラッシュしてしまった。母船に帰ろうとして発射に失敗してしまったのだ。今あなたは月の裏側にいて、母船は月の太陽側に200マイル(320キロ)行ったところにある。宇宙船はすっかり壊れてしまい、わずかな道具だけ残った。あなたを含めた乗組員は、この道具を活用して母船までなんとかたどり着かなくてはならない。以下の15の道具に、一番必要なものから順番に優先順位をつけてください。(1~15) NASAによる回答と理由をカッコ内に示す。 1 マッチ (15 酸素がなければ火は使えない) 2 宇宙食 (4 栄養は必要) 3 50フィートのナイロン製のロープ (6 けが人を運ぶのに役立つ) 4 パラシュート (8 太陽光線から身を守る) 5 太陽電池で動く携帯暖房 (13 暖房が必要な寒い月の裏側では太陽がないので使えず、使える表側は暑いので暖房は不要) 6 45口径のピストル2丁 (11 移動のための勢いをつけるのに使える) 7 粉ミルク1ケース (12 食べ物があれば不要) 8 100ポンド(45キロ)の酸素タンク2つ (1 生存に不可欠。月の重力は1/6なので重さは問題にならない) 9 星図 (3 ナビに必要) 10 救命ボート (9 移動のための勢いをつけるのに役立つ) 11 方位磁石 (14 月面の磁場は偏極していないので使えない) 12 5ガロンの水 (2 これも大事。太陽光を浴びて汗をたくさんかく) 13 照明灯 (10 母船に近づいたら合図が必要) 14 救急箱 (7 ビタミン注射が必要) 15 太陽電池のFMトランシーバー (5 太陽側に出たら母船との交信に使う) 以上のNASAの順位と、自分のつけた順位の差(絶対値)を求める。例えば、4のパラシュートのNASAの優先順位は8だが、自分は13とつけた場合、差は5ポイント、といった具合に。そして各項目のポイントの合計を出す。このポイントは低い方が、正解により近いことになる。NASAの診断によると、 0-25 すばらしい 26-32 よい 33-55 ふつう 56-70 う~ん 71-112 さようなら となっている。 授業では、まず個人で優先順位をつけ、次に(回答を教えてもらうまえに)4-5人のグループで相談し、グループの合意の上で優先順位をつける。そして、回答を見て、個人のポイントと、グループのポイントを比べるのだ。 クラスでは、個人だとだいたい55-70ポイントで、グループ相談後は30ポイント前後に改善した。これは、ふつうの大人が5人くらい集まると、①月の裏側では太陽電池は使えない ②酸素がないと火は使えない ③方位磁石は月では役に立たない といった常識が分かち合えるのでぐっと正解に近づくためだそうだ。 しかし私のグループだけは例外だった。私の個人の回答は46ポイントだったのだが、グループ全体は58ポイントに跳ね上がってしまった。私のグループは、ヘルスケア会社の人が「一番大事なのは救急箱よ!」と強く主張したり、ちょっと年配の慎重派が「まずは照明灯を打ち上げて仲間が助けにくるのを待とう」という受身な姿勢だったため、ずいぶん変わった優先順位をつけたのだ。私はなんだか違うなぁと思いつつも、英語で彼らを説得するのが面倒だったし、お腹もすいていたので敢えて自己主張しなかった。 教授は、「間違った人がリーダーシップをとると、グループのシナジーが働かない良い例ですね」とうまくフォローしていた。 ちなみに、家に帰って夫にやってもらったところ、だいたい私と似たような回答で、ポイントもまったく同じ46ポイントだった。万が一宇宙で遭難したら、二人で相談してもあんまりシナジーはなさそうだ。
by dc20036
| 2006-05-21 12:16
| 大学院(MBA)
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